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話し手のバーは低く,聞き手のバーは高い

ChatGPT Image 2026年7月17日 22_52_03

チャットはグローバルコミュニケーションの武器

最近のグローバルミーティングの主流はWeb会議です.10年前,20年前(つまりコロナ禍以前)であれば,Web会議はそこまで発達しておらず,経営会議などの重要会議を除けば,日常的な会議は専ら電話会議でした.従って,グローバル会議のことをテレカン(テレフォンカンファレンス)と呼ぶ方が結構いらっしゃいました.

次第にネットワークが高速化され,Webミーティングツールが改良されるにつれ,テレカンはWeb会議に主役の場を奪われてしまいました.Webミーティングツール(Teams,Zoom,Google Meet どれでも)の良いところは,チャット欄が設けられていることです.会議をしながらチャットでフォローするということができるようになりました.

チャットは,手紙やメールなどのよりフォーマルなコミュニケーションと違って,推敲されることがほとんどないため,話し言葉に近い生きた表現を習得することができ,チャットはグローバルコミュニケーション力の向上にはとても効果的です.会話だけでは聞き取れないフレーズであっても,チャットでは,話し言葉に近く普段スルーしまうようなフレーズも,ストックされ定着化していきます.次第に,話し言葉と書き言葉が一致してくるという感覚です.

例えば,Teamsで会議に入室して待っていると,突然 “I’m running late” とチャット欄に入ってくることがあります.これは,約束の時間に遅れそうという意味です.会話の中で “I’m running late” と言われると,そのフレーズを知っていない限り,意味が分かりませんし,大筋のディスカッションの流れに影響しないので,スルーしてしまいがちです.

このようにチャットは,お互いに背景情報を共有しながらもなるべく語数を減らしてコミュニケーションを取りたがる傾向にあるため,チャットは会話で使えるフレーズの収集原としては,とても有効と考えます.

グローバルの場で出会う,独特の言い回し

さて,話はチャットからはなれ, “I’m running late” のような独特の慣用フレーズについて考えたいと思います.慣用句は聞いたことがない限り思いつかないです.このような「遅れそう」という場合,多くの方はこう表現されるのではないでしょうか.

“I will be late や ”Can you wait for another 5 min?”

これでも全然問題はありません.確実に伝わります.

同じような慣用フレーズは星の数ほどあります.例えば,下記のようなものです.

“I am conscious of time 残り時間が少なくなってきた

“All set 準備万端

“This is the last but not least” これが最後ですが大切なことです

“Long story short” 要約すると

“We are on the same page” 意見が一致している

“Big picture” 大局は

これらの表現の特徴は,使われている単語自体はどれも平易だという点です.難しい単語は,一つも含まれていません.平易な単語を組み合わせて豊かな表現を生み出しているということです.

これらの表現の意味が分かるかどうか,使えるかどうかは,その言い回しに一度も出会ったかどうか,その一点によるだけです.

発言者のバーは低く,聞き手のバーは高い

ここに,ある非対称性が発生します.

例えば,日本人であれば, “I’m running late” ではなく, “I will be late” と言ってしまいがちです.これでも,十分に意味は通じます.つまり,ノンネイティブの話者にとって,発言者側であれば,代替表現があるために,会話成立難易度のバーはそれほど高くありません.知っている単語を並べれば,何とか用は足ります.

ところが,聞き手側に立つと, “I’m running late” のような表現に出会ったことがなければ,個々の単語は知っていても,フレーズ意味を推測するのは簡単ではありません. “run” と “late” があるため,状況を推測して,走って遅れる…遅れそう?なのかな?と推測ができないこともないですが,推測に時間がかかり脳のエネルギーも消費してしまいます.聞き手側にとっての,会話成立難易度のバーは,発言者側のそれよりも高いと思われます.

ノートに書き溜め,意識して使う

私自身,グローバル企業に勤めていた頃,このような表現に出会うたびに,ノートに書き溜めていました.そして,次に同じようなシチュエーションが巡ってきたときに,意識してその表現を使うようにしていました.はじめは,こういう決まりきった慣用句を使えたらカッコいいという気持ちから入りましたが,継続的に真似ることで,少しずつ自分のものになっていきました.

メールやチャットの書き言葉でも,同じことを試みました.親しい同僚に対して軽く”遅れてゴメン”というような断わりを入れる際,あえて “I’m sorry” ではなく, “Apologies for…” と軽い表現で書くようにしていました.これはイギリス人の同僚が同じようなシチュエーションで使っていたのを真似たものです.表現+使えるTPOをセットで練習したということになります.この作業を繰り返し行うことで,聞き手側のバーを下げていったことになります.

当道場が大切にしていること

グローバルコミュニケーション道場でも,この学習法の考え方を大切にしています.新しい表現に出会ったら,聞いて分かるだけで終わらせず,自分が発言者側になったときに,意識して使ってみることを推奨しプログラムの中に取り入れています.この反復こそが,聞き手側のバーを,自分自身の手で下げていく,一番の近道だと考えています.

グローバルコミュニケーション道場
代表 深見忠義

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