グローバルコミュニケーション道場の源流
グローバル製薬企業に勤めていた際,部下に対してグローバルコミュニケーションのトレーニングを行う必要性を感じ,同トレーニングを企画しました.私たちが欲しいグローバルコミュニケーションのプログラムを探しても見つからず,トレーニングを外注することは諦め,人事部のHRパートナーと相談し,自分たちでプログラムを作ることにしました.たまたまそのHRパートナーは外国人で,異文化コミュニケーションについて専門的に学ばれたバックグラウンドを持っていたので,彼と二人三脚で作成しました.グローバルコミュニケーションを学ぶ要素として,「異文化理解(Cultural Understanding)」「論理的意思疎通(Logical Communication)」「表現技法(Rhetorical techniques)」の3要素に分解し,座学2日とOJT半年というプログラム設計を行いました.ここでは各要素の詳細は割愛いたしますが,これがグローバルコミュニケーション道場の源流となりました.
「サーキュラー型」対「リニア型」
上記の3要素のうち「論理的意思疎通(Logical Communication)」では,なぜグローバルコミュニケーションでは論理的な会話術が必要になるのかの説明をおこないました.日本語と西洋言語(主に英語)では,構成パターンに違いがあります.日本語はサーキュラー型コミュニケーション(あるいはスパイラル型)と言われ,いわゆる渦巻の構成パターンで,修辞や説明が続いた後で最後に結論が来る構成です.一方,英語はリニア型コミュニケーションと言われ,直線的に構成されます.英語で結論が先に来るパターンが多いのはこのためです.言い換えると,サーキュラー型は間接的・婉曲的,リニア型は直接的・単刀直入と表現できるかもしれません.この考え方は,1966年に,応用言語学者Robert Kaplanが発表した論文「Cultural Thought Patterns in Intercultural Education」に基づいています.
しかし学術的な表現ではなかなか腹落ちしませんので,このコンセプトをスポーツに例える事例も存在します.日本語はゴルフであるとされ,英語はラグビーであるとされる表現が存在します.直感的に納得できる例えです.
収束を目指す言葉,発散を目指す言葉
ここに,二つの言語コミュニケーションの,目的の違いが見えてきます.
日本語は,同意や合意という調和,つまり収束を重んじます.一方,英語は,違いをぶつけ合うことで,新しい発想やイノベーションの誘発を期待します.いわば,発散を目指す言葉です.
どちらが優れている,という話ではありません.ゴールの定義が違い,その道のりが違うだけです.
郷に入っては郷に従え
これは私の考えですが,同じコミュニティ内では,同じ型でのコミュニケーションが重視され,別のコミュニケーションの型は歓迎されない.サーキュラー型のコミュニティの中ではサーキュラー型のコミュニケーションがスタンダードとなり,リニア型のコミュニケーションを取る方に対して,「配慮がない」「ぶっきら棒」「攻撃的」というネガティブな印象になりやすく,逆もまた然りです.リニア型のコミュニティの中ではリニア型のコミュニケーションがスタンダードとなり,サーキュラー型のコミュニケーションを取る方に対して,「何が言いたいのかわからない」「回りくどい」「積極的でない」というネガティブな印象になりやすいと言えます.
グローバルコミュニケーションは,ローカルコミュニケーションとは違い,様々なバックグラウンドの方が混ざり合いコミュニケーションを行う場であると言えます.つまり,サーキュラー型とリニア型の両方のコミュニケーションスタイルが混在する場となります.伝えたい内容そのもので意見をぶつけあう以前に,伝え方の違いによる対立を生んでしまい,中身の議論が深まらないのはもったいないと思います.
グローバルコミュニケーションで重要なのは,自分の型がどちらの型であるのかを認識し,相手の型を理解・尊重し,お互いにすり合わせ行くことが重要と考えます.私たち日本人のスタンダードであるサーキュラー型の視点から,相手が直接的な表現をしたとしても,相手がリニア型のコミュニケーションスタイルであるということを理性として理解していれば,感情的になることもなく,劣等感を覚えることもなく,純粋にコミュニケーションの型が違うだけであると,冷静にディスカッションができるのではないかと思います.
当道場が大切にしていること
グローバルコミュニケーション道場では, Circular(サーキュラー型)対Linear(リニア型)というコミュニケーション様式の違いとして,カリキュラムに含めて考えていくセッションを用意しています.
全くスタイルの違う2つのコミュニケーションの型を,どう練習して行き来するのかは永遠の課題であると思いますが,繰り返しトレーニングすることで慣れて行くことは可能です.この相手の型にどう合わせていくかという練習法はグローバルコミュニケーション道場のカリキュラム設計思想にも反映されています.
グローバルコミュニケーション道場
代表 深見忠義





