コラム読了目安: 約5分

比喩表現(メタファー)を考える

ChatGPT Image 2026年7月16日 23_03_51

「彼は,違うゲームをしている」

誰かを称賛するのにどんな表現を使いますか? 簡単なものであれば,

“He / She is very good”, “He / She had a good job”

などは学校で教わります.その他ですと,

“He / She is out of the world”, “He / She is in the next level”, “He / She is the hero” – 彼/彼女は異次元だ

などという表現を使うかもしれません.

そんな中,最近あるビジネス系のYouTube動画を見ていた時のことです.経営者へのインタビューを軸にしたディスカッション番組で,出演者の一人が,ある経営者の仕事ぶりを評してこう言いました.

“He plays a different game”

直訳すれば,「彼は別の試合をしている」となります.もちろん,耳にしたのはポジティブな文脈での表現でしたので,「彼は別の試合をしている」=「彼は異次元のスーパースターだ」「彼は群を抜いて仕事ができる」という意味になります.日本語ではあまり見られない英語ならではの比喩(メタファー)かもしれません.

しかし,気を付けたいのは,比喩(メタファー)は生き生きとした表現であるがゆえに,同じ情景を思い浮かべなければ話が通じないということです.例えば,ネガティブな文脈で先ほどの“He plays a different game”

を使ったとしましょう.その場合,「彼は別の試合をしている」=「彼は融通が利かない」「彼は一匹狼で,チームに馴染まない」という情景が思い浮かびます.

同じ単語,同じ語順.なのに,受け取る印象は正反対です.

意味を決めているのは,辞書ではない

なぜこんなことが起きるのでしょうか.これは私の考察ですが,表現の意味を決めているのは,辞書的な定義ではなく,その場の文脈つまり話し相手間で共有している背景情報に依存するからです.誰が,誰について,どんな状況で,どんな表情で発したか.その背景情報が共有されてはじめて意味が確定します.

これは,英語だから起きる現象ではありません.日本語でも同じことが起きます.「彼/彼女は尖っている」という表現を見てみましょう.個性の話をしている文脈や,個性豊かフリーランス集団の中での発言であれば,能力的に突き抜けているという意味となり,褒め言葉になります.一方,チームワークが大切なグループ内での発言であれば,協調性がないというネガティブな意味に捉えられる可能性もあります.言語を問わず,人間のコミュニケーションに共通する構造的な問題と思われます.

「行間」を埋めるのは,語学力ではない

ここで重要なのは,“He plays a different game” という表現そのものを知っているかどうかは,実はさほど本質的ではないという点です.

本質的なのは,その一言が発せられた場の空気,話し手と対象者の関係性,それまでの会話の流れといった「背景情報(行間)」を読み,正しい意味を組み立て直す力です.これは,語彙力や文法力を鍛えるだけでは身につきません.

コミュニケーションが得意とされる方は,このような文脈を理屈ではなく,感覚としてハンドリングできる方々なのだろうと思います.

ただ,仮にある表現を別の文脈(意図しない意味)で捉えたとしても,多くの場合,話が少し進行すれば,自分の受け取り方が違っていることに自然と気づきます.食い違ったまま話を進行すると,会話が成立しにくくなるからです.

当道場が大切にしていること

グローバルコミュニケーション道場では,外国人コーチがセッションでアテンドし,このような比喩表現(メタファー)も自然に繰り出すことがあります.このような比喩表現(メタファー)は数に触れると細かい意図は分からなくても,だいたいこういうことを言いたいのかなという“あたり”が付くようになってきます.それは,個々の表現に固執することなく,大きなディスカッションの流れの中で,ディスカッションのゴールへ向けてファシリテーションを行う能力(リードする力)を最終的な目標と捉えているからです.ディスカッションの大きな流れさえ捉えられれば,この表現はポジティブなのかネガティブなのかは概ね判断が付きますし,相手の表情などの非言語情報も参考になります.グローバルコミュニケーション道場の繰り返し稽古の思想は,そのような感覚が醸成されるまで繰り返しディスカッションを実施し,体で覚えるようにするという設計思想に基づき設計されています.

グローバルコミュニケーション道場
代表 深見忠義

この記事をシェアする

次世代のリーダーたちを
世界の舞台へ送り出すために

グローバルコミュニケーション道場は,貴社のカルチャーや課題,育成対象者に合わせた完全カスタマイズでのご提案を軸としています
まずは詳細な資料をお読みいただくか,現在直面している課題をご相談ください

※個人受講をご希望の方も,こちらからお気軽にお問い合わせください

ホワイトペーパー表紙