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グローバルカンファレンスで見た日本人の沈黙

ChatGPT Image 2026年7月15日 16_54_20

世界中から集まる場

大手グローバル企業に勤めていた頃,私は日本チームのリーダーを務めていました.部下は全員日本人で,英語には不自由せず,日常的に英語で業務を行うメンバーばかりでした.

私が所属していたのはグローバル組織で,規模の大小はあれ各国に同等のチームがあります.こうした組織では例外なく,世界各国からメンバーが集まるカンファレンスが定期的に開かれます.Induction MeetingやAnnual Meetingなど,呼び方はさまざまですが,欧米では特に盛んです.コロナ禍で一時オンライン開催に切り替わった時期もありましたが,今ではすっかり以前の対面形式に戻っています.

2〜3日かけて行われることが多く,最大の目的は人的ネットワークの構築,つまり”Get to know each other”です.これは至極合理的な発想で,海外でも「一度食事を共にすると,次からはリモートでも会話が弾む」という感覚は,日本の飲みにケーション文化とそう変わりません.事業状況の報告,ゲストスピーカーの講演,参加者によるワークショップ,そしてランチやディナー・コーヒーブレイクでのソーシャライズ.こうした要素で構成されるのが,こうしたカンファレンスの定番です.

ワークショップで起きたこと

ある年のカンファレンスに,日本チーム全員(8名ほど)で参加したことがあります.会場はホテルの大宴会場で,参加者は総勢100名ほど.参加者の多くはアメリカ人でしたが,国土が広いアメリカでは東部・中部・西部でも文化が異なり,普段あまり交流のない同士も多く,実は彼らにとっても「初めまして」の顔ぶれが少なくなかったようです.

私自身はこの手の大規模カンファレンスに何度も参加していたので,特に緊張することはありませんでしたが,日本チームの中には初めて参加するメンバーもいて,緊張している様子がうかがえました.

席は円卓がいくつも用意され,各テーブルに日本人が1名ずつ配置される形でした.この日もワークショップが行われ,議題は組織のパーパス設計.こうした場のワークショップの議題は,たいてい組織運営についての提案・提言です.

各テーブル(10名程度)でどんな議論が交わされていたのか,私自身はすべてを見て回れたわけではありません.ですが後日メンバーに聞くと,海外勢に押されてなかなか発言できなかったという声が多く聞かれました.そして,各テーブルからの発表者として手を挙げた日本人メンバーは,残念ながら一人もいませんでした.

「シャイだから」ではない

こうしたカンファレンスに何度も参加してきて,なぜ日本人がこうした場で存在感を示せないのか,私なりに見えてきたことがあります.

よく「日本人はシャイだから」と言われます.しかし,これは違うと思っています.シャイなのではありませんし,シャイという一言で片付けてはいけない問題です.

存在感を示せない5つの理由

これは学術的な裏付けのある話ではなく,あくまで私自身の考察ですが,こうした場で日本人が発言できない理由には,いくつかのパターンがあると感じています.

1.発言のハードルを自分で上げすぎている 

日本人が普段行っている議論のレベルは,実は決して低くなく,むしろ高いです.そのため「常に相手の期待値を超える発言をしなければ」と無意識に思ってしまう.「こんなつまらないことを聞いて(言って)いいのだろうか」とためらっているうちに,話はどんどん先に進んでしまいます.

2.賢く見られようとしすぎる 

「難しい質問こそ良い質問だ」という思い込みがあり,気の利いた難しい質問を思いつけずに黙ってしまう.シンプルな質問で十分な場面でも,つい構えてしまいます.まだ議論の序盤では,参加者のイメージが共通化されていないこともあり,シンプルな質問の方がかえってメンバーのベースライン構築には役立つことがあります.「ああ,あなたもここがわかっていなかったのね.実は,私もなのよ」といった具合です.

3.抽象的な議論に耐える力が,かえって仇になる 

日本人はHigh Context(高文脈)な文化の中で,不明確なベースラインの上でも「なんとなく」合意形成をする議論に慣れています.一方,欧米はLow Context(低文脈)な文化で,事実に基づいて一つひとつ確認し,合意事項を明確にしていく議論のスタイルが主流です.これが日本人の目には「議論」というより「作業」のように映り,発言のTPOとして,どこか気後れしてしまうことがあります.

4.割って入る「間」をつかめない 

日本語には,文と文の間に「間」があります.一方,英語は途切れず流れていくフロー型の言語で,フローの上にフローが重なっていきます.日本語のように,会話の切れ目を見つけて割って入るタイミングをつかむのは,実は簡単ではありません.特に私が面食らったのは,アメリカ東海岸のビジネスパーソンです。とにかく早口だったり,言いたいことが次々に出てくる.彼が言っていたのは,「早口で申し訳ないが,これに慣れて欲しい.ゆっくりしゃべると言いたいことを忘れてしまうので,間髪入れずに話続けます」 なるほどね.そういう方もいらっしゃるのかと思った一方,その方とのディスカッションに割って入っていくには,こちらも言いたいことが出てきた際には,強引にでも話を止めて割って入らなければならない.そう割り切ってしまえば,2でお話したシンプルな質問も投げやすくなりました.要は,こちらの問題なのだなと思いました.

5.話題の引き出しが少ない 

私たち日本人は,雑談のようなソーシャライズの話題に対して外国人から話を振られても,「日本ではこうなんです」や「私の場合こうなんです」のような返答しかできず,さらに話を発展させることが得意でありません.国際的な視点で新しい話題を投げかけることが苦手です.このような雑談スキルは,ディナーなどのソーシャライズの場で特に重要になります.博識であればあるほど困りません.日本語の雑談でも同じだと思いますが,ソーシャライズの目的は相手を理解することなので,会話の引き出しは多いに越したことはありません.
ソーシャライズということで一つTipsを上げるとすると、定番の質問として「好きな映画は?」「好きな音楽は?」と聞かれることがよくあります.私は「英国王のスピーチ」という映画が好きなのですが,邦題だけでは,残念ながら話が続きません.普段から作品の原題も調べておくと,こういうときにまごまごせず,すっと会話がつながります.ちなみに原題は”The King’s Speech”です.

こうした課題設定は,グローバルコミュニケーション道場のカリキュラムにも設計思想に反映しております(詳しくは詳細資料(ホワイトペーパー)をダウンロードしてご確認いただければと思います).

グローバルコミュニケーション道場
代表 深見忠義

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